2017-02-26から1日間の記事一覧
・いちまいのガラスの魚(さかな)泳ぎゐて透明體となりし海なり・幾百の川ながれ入り流れ入り魚(いを)のたまごを光らせてゐる・砂丘に濱ひるがほの花咲きて雲は海よりひくゝ沈めり・潮騒は胸に鳴りやまず砂の丘驅け下りてみれどなぐさまぬかな・鮫の眼にまた…
・白薔薇の花束ほどのうつくしさ殘して死んだひと思ひ出す・シルクハツトをかむれる天使ら舞ひ降(を)りるわれは海邊に三月も暮らす・魚族らにとりまかれゐる海底の賑やかさなれば野に忘れゐし ・明け方のうす霧のなかにねむりゐる花花の眼はわれひらきやる・…
・月影に喰はれる夢におびえつつひもじくて猫は眠れぬなり ・蒲公英(たんぽぽ)の花花のなかにおちこぼれ消えたいのちは星かわからぬ ・噴水のなかの世界よりながれくる春になる音(ね)が今日も聞える ・わがねむり夢にとられてゆく頃は月夜の空に虹かかりをれ…
松本良三『飛行毛氈』 栗田書店〈日本歌人叢書 第一篇〉 1935(昭10年) 良三没後に刊行された歌集で、編集およびタイトルは旧制中学以来の友人石川信雄(歌集『シネマ』)によるもの。タイトルは良三の中近東好きに因んだもののよう。飛行毛氈とは空飛ぶ絨毯の…