2017-02-27から1日間の記事一覧

石川信雄『シネマ』Ⅰ (モダニズム短歌)

・春庭(はるには)は白や黄の花のまつさかりわが家(いへ)はもはやうしろに見えぬ ・白鳥の子をかばふため家鴨等に棒ふりあげるこどもでありき ・白薔薇(しろばら)のをとめとわれはあを空にきえ去る苑(その)の徑(みち)の上なり ・すみれさへ摘(つ)まうとしなか…

斎藤史『魚歌』Ⅰ (モダニズム短歌)

・白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう ・時劫(とき)さへも人を忘れる世なれどもわれは街街に花まいてゆく・くろんぼのあの友達も春となり掌(て)を桃色にみがいてかざす ・アクロバテイクの踊り子たちは水の中で白い蛭になる夢ばか…

早崎夏衞『白彩』Ⅰ (モダニズム短歌)

・まなぶたをうらがへされて待避線路に億兆の夢をわれは追ひゐし ・みがまへてきびしきこころひねもすをみじんに刻みつひに氣死する ・なにか魂(たま)をついばむものを怖れながらまちうける陷穽をおもふはたのし ・黒蝶の翅(つばさ)を透(す)かしけふもまたか…

岡松雄『精神窓』Ⅱ (モダニズム短歌)

・深海(しんかい)に靑い眼玉の魚と住めばフランス少女がまばたきをする ・海底の魚族らと萬年いがみあへど碧い眼玉は憎むことなき ・不思議にも靑い星空に眸がすめばヴアイオリンの曲がながれくるなり・なんとなんと五つの指がのびのびと靑き植物に觸れてゐ…

岡松雄『精神窓』Ⅰ (モダニズム短歌)

・冬花のやうに冴えないわが感情(こころ)にけさカナリヤが凍(こご)え落ちにき ・森の彼方の靑い合唱(コーラス)群鳩はきのふの夢のやうに輪を消してゆく ・白鳩の羽波を追へる少女子の眸差(まなざし)たふとし北風(かぜ)よけがすな ・白い通信をもたらす鳩が迷…