2018-08-03 海賊 その他 西川満 (詩ランダム) 海賊 西川滿 俺は船長だった。海洋の日没が俺の心を襲ひ、船腹を血に染めた。黒死病で倒れた舵夫の屍を水葬に附した後、俺はいつか盲目(めしひ)になつてゐた、盲目に。 豹 俺を救つてくれた若い豹よ。きみのそのたくましい肉體のうねりに、俺は愚かな過去のアフリカ地圖を棄てる。 さあ共に行こう。新たなる大陸に向つて。 鷗 ──白い封筒を寄せるあるひとに──遙かなる海港の鷗が僕の部屋を訪れる。おびたゞしい傷痕の夕燒をもつて。 西川満 夫人 詩ランダム