すずのみぐさ女 (モダニズム俳句)

 

田中みぐさ女→すずのみぐさ女→関口みぐさ女と号を3度も変えているので句が探しにくい。今後新しい句が見付かれば句の差し替えもありか。
新興俳句の中でもモダニズム俳句と呼ばれるのは一般的に昭和10年前後の句に多いようだ。「白」「薔薇」はモダニズム語彙。


・扉に立てるガルソン靑き春服を

・吾子の服しろければ白き薔薇を繍ふ

・春雪の降れば吸はるゝ砂丘かな

・春曉の地震(なゐ)は響らぐ玻璃の水

・春愁やピヂヤマの胸の朱(あけ)の紐

・春愁のかゝへいだせる筑紫筝

・春曉の素きもめんの肌じゆばん

・泣き呆けの腕のしびれ白薔薇

・髮洗ひ今日の安さを愉しめり

さみだれや句ごころありて强からず

・若楓溢れる水は飮めるみづ

・若葉海眞天の日に蝶飛べる

・白きものましろになれと洗濯す

・蟲干や少しひもじく衣たたむ

・萩しろく立ちいづるとき日向あめ

・秋の蚊にさゝれてみたる腕かな

・黃おしろい秋の貌をばつくるなる

・岐れ路のひとのおもひに咲く野菊

・秋さびの思慕もち酒を暖むる

・繕ひし足袋はくことの親しさは

・枯草に狆はくさりのねのひきぬ

・雪晴の視野が昏むと小手かざす

・冬の夜や足をのばしてねてもみる

・さかんなる水勢に菜を打たせつる

・菜を漬けて氣易きおもひありにけり

・ゆでしものまさに冷えて水にありぬ

・壁は黃にカロリー表は繪を添ふる

・しづごころ白磁の皿を拭きかさね

・秋立つ日簾きりりと捲きあぐる

・湯に浸り嬰児の臍窩華のごと

・豆腐やがたそがれの水あけてゆく

・わが旅の黒手袋のゆびぞ透き

 

銃後俳句から

・我家の柿をたうべて人征 きぬ

・ばんざいばんの底にゐて思ふ

・人征きし部屋の燈を消し步く

・人征きしあとの畳に坐りつる

 

 

 


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