秋雨
丘英二
雨!雨!雨!
無限の愛と極地の幸福とを私は夜更けに考へて見る。
秋風、秋雨それこそ哀愁深い鄕愁の嘆きだ。
固い松の葉を打つ雨は私の冷たい意志を叩くやうにそして故鄕を解纜した白帆に頽廢のエレジイをしめらせる。
私の情熱は過ぎた幻を追ひ又失望して歸つてくる。逝つた幻想の華麗な花片は雨を思ふ存分吸つてゐる。
あゝ 秋!
私は限りない寂しさを見つける。それは遠い灯をあてに、もがき苦しんでゐる自分の像ではないか。
默つて耳をそばだてよ。
秋雨はやさしく泣きごとをかきたてゝゐるぞ!
1934.9.9
「臺灣文藝」第2巻第2号(昭和10年(1935年)2月)
臺灣文藝聯盟編輯 東方文化書局刊 復刻本より