星のない夜
丘英二
こだまする騷亂の蜂起する日沒になると中毒した陽熱を吐く石に股がつて私は空に網を投げ上げる。漸くたぐり寄せた憶出を刻みつける寶石を探して歩き疲れる
黄昏を焦した街燈は更に私を幻想の掌から掌に渡す。思ひきり逃避に息をきらせて安心する間もなく身體を見失ふ靄 のなかでない寶石を悲しむ。灯のない部屋では失望の寂しさが荒く喘ぐ
「臺灣文藝」第2巻第6号(昭和10年(1935年)6月)
『日曜日式散歩者』(行人文化実験室 2016年9月)より
水蔭萍 雄雞と魚 台湾 風車詩社
利野蒼 或ル朝 台湾 風車詩社
林修二 喫茶店にて 台湾 風車詩社
戸田房子 遠い国 台湾 風車詩社