月光と散歩 林修二(林永修) (詩ランダム)

 

月光と散歩

                                       林修

 

散歩

雨、 晩秋時雨……

無定形螺旋状の小路を登りて、独りで晩秋の味をなめて見る。

凋落と挽歌、魂と肉体、結合と離散と……
音、色彩、感触。紅葉の時雨は詩の響。

 

何もない部屋とマリヤの像と鏡。
何らなすことのない夕暮
細々しい思念に灯をつけて霧の夜の虹を見る。

 

小さな思い

夜光蟲が光る─
海の響を楽しむにはコクトオの耳をかりるのか
それとも貝殻らになることか……

 

思い出

死の恋
            恋の死
弱い感情のルツボを覆した夜の思ひ出。

 

十二月

感傷と夜。夜に聞く秋のトレモロ
それは旣に葬られた言葉でなくてはならない。
秋に死んでしまった恋のムクロを静に愛撫する。

 

月光

真夏の深海の底のリズミカルな搖蕩。
月は疲れて歩き出す。僕はこのアルバムを不変色に保存したい。

 

意欲

時として果実になりたいことがある。
新鮮なる香気と少女の如き無垢なる性の羞恥は魂の疲れを甘やかになでまはす。

新鮮な果実への意欲。
私の五管の血圧は常に桃の花でありたい。

 

夢と春の譜

外の吹雪は止んで水銀は0度だ。遙かなる海島を渡って来る南國の抒情。白い堆積の中から木立に咲いた花粉の匂いをかゞんとして王子の如き盛装して春を探す。

 

 

 

『MOULAN』第3輯にこの総題、この並びで掲載されているとか。

林修二集』(臺南縣文化局 2000年12月)より。

林修二集』は漢字や平仮名の表記に不統一なところがあるようで、前半「蒼い星」は基本的に正漢字+現代かな使い、後半「集外集」は基本的に当用漢字+歴史的かな使い、但し1つの詩の中で両方が混じっていることもあるようです。

 

 

林修二 喫茶店にて

林修二 郷愁

林修二 瞳

 

水蔭萍 雄雞と魚 台湾 風車詩社
利野蒼 或ル朝 台湾 風車詩社
丘英二 星のない夜 台湾 風車詩社
戸田房子 遠い国 台湾 風車詩社

 

 

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