松本良三『飛行毛氈』Ⅲ (モダニズム短歌)

白薔薇の花束ほどのうつくしさ殘して死んだひと思ひ出す

・シルクハツトをかむれる天使ら舞ひ降(を)りるわれは海邊に三月も暮らす

・魚族らにとりまかれゐる海底の賑やかさなれば野に忘れゐし 

・明け方のうす霧のなかにねむりゐる花花の眼はわれひらきやる

・森のなかにたほれゐるわれのまはりより茸の類が夜夜に生れる 

・蒲公英(たんぽぽ)の花花の下に五百ほどくさつておちた星埋めやる

・觸手の生えた不思議な海のいきものにわれの裸體(はだか)の追ひかけられる

・野の空に月あかく落つる夕(ゆうべ)よりペルシヤがわれの故郷でありき 

・人のなき草原にそつとひざまづき花にもの言ふは世の終りなり 

・これはまたなんと晴晴(はればれ)しき世のなかぞ七面鳥がいきどほりをり 

・最高の月日ながれて魚族らは湖(うみ)の底にて星星を見し 

・襲い來る鬼どもを見とどけてやらんため鏡の中に一夜を明かす

・扉(と)のうちにどのやうな秘密があらうとも白の把手(はんどる)は手に觸れるまじ 

・何も慾しくなくなつてしまふさびしさは月から流れよつて來るなり 

・薔薇ばなには遂に なれない人間がそんなに冷たくてよいものかしら



松本良三『飛行毛氈』Ⅰ
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/02/26/072047
松本良三『飛行毛氈』Ⅱ
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/02/26/082726


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