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松本良三『飛行毛氈』Ⅱ (モダニズム短歌)

・月影に喰はれる夢におびえつつひもじくて猫は眠れぬなり 

・蒲公英(たんぽぽ)の花花のなかにおちこぼれ消えたいのちは星かわからぬ 

・噴水のなかの世界よりながれくる春になる音(ね)が今日も聞える 

・わがねむり夢にとられてゆく頃は月夜の空に虹かかりをれ

・靑や黒の美しさ知らぬ赤ん坊の頃の眼が見たやさしさ知らず 

・長い路に鈍(のろ)い驢馬らをあゆませて花見てまはる春の苑なり 
 
・人間の見たこともない國の映りゐる泉(みず)飲み暮らす獸(けもの)たちなり

・花咲かぬ草花となり晝も夜も水飲まされし季節も過ぎて

・眞夜中の海からあがって來たわれはなんと大股に街歩みゆく 

・ほろびゆく星星にやつたやさしげなこころもいまはよほど遠いも

・ペルシヤからさほど遠くない國國は赤や黄の花の咲く國であれ 

・春山の切株に來てやすみゐるこころに灰色の獨樂まはり出す 

・春かすむ都の空にまぎれ込み白の氣球をわれは盗めり
 
・四五年は昏睡に落ちてゐしなれば白痴のわれが蝶にみとれる 

・四年前死にかけてゐた昆蟲のまなざしが時にわが眼にやどる 

・はなやかな晴衣着るさへけだるくて魚族の世界われあくがれる 


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