・散歩人種は
マヌ・カンとなり
視線だけが
空間のなかで
音叉をはじく
・腦髓と
腦髓と腦髓と
プランクトンだ──
みじめなほどに
模索し合つて
・皮膚はみな
魚族となつて
糸のさきの
銅臭を目懸けて
あつぷ、あつぷ
喘ぐ
・剝落する
音がしめやかに
蒸せてゐる──
深夜の舗道は
瘴氣を植ゑて
・ギニヨールを踊らせてゐる
香具師の眼に
行人の眼が
──突出た
──凹んだ
・公衆電話が
ここにも ぽつんと置かれてゐる──
交換手に
春の挨拶を送らう
・沼である
草がゆれてる
草のなかで
ウクレレを鳴らす
・丘は高い
地平に遠い─
馬に乗つてかげゑが通る
幽霊が通る
・街道だ
自動車が闇を追つかける
砂塵がまひのぼり
おいてけぼりの月
・ゆふぐれの都會は まぼろしの灯をつけて
後家さんが通る
犬をつれて──
若い!
・びいるだ!
びいるだ!
あつちでも こつちでも
よんでゐる──
わびしいたんぼの
からすのやうに
・食欲直線──
性欲直線──
がらくたの生命の馬車を
きしらせてゐる
・めかして
すまして
春風に乗つて
露出して
甘へて
恥骨の自動磨滅作用
・をどつてる
たはむれてゐる
舞ふてゐる
つながゆれてる
つなわたりです
・無限連續の循環に手を擱く
手のしびれ─
夜陰の花のひそかな媚體
・軌道は無邪氣に平行四邊形を装ほひ──
車輪の隋力が
ぎくり ぎくりと辷る
・落葉の散らばる舗石の上に
人の足と 機構の網と
からんで搖れる
・一つの確かな實在が踊る
醉ひ心地
窓枠もなく
華美なアラベスク
・ダンス靴に
ひそかにオナニスムをやつてゐる
トレモロ
トレモロ
媚藥の撒布
・直線、曲線
バネがなびくよ
足が
頭が
みんな空を向き
みんな手を振り
・おしやべりは
蓄音器が引受けてしまつたし
奥さんは
欠伸をお嚙みしめになる
・蒼い顔して
煙草ばつかり吹かしてる──
コリユームの莖の透けるやうな官能
・そのちつちやな
あなたの二つの
靴のさきに
纖い哀歡の
銀が散ります
・墓地の向ふに スパークはあがり
醉つてゐるな──
といふ意識が遠く映つた
・馬と私に
すばらしいインスピレーションを強調した
拍車だ 拍車だ
きらめく一線
・うみの
おほきなめらんこりいにつつまれて
きままな情熱の散策だ
月だ
・をんなは をんなは
しろく なやましい
海よ
あんにゆいの伴奏をやめてくれないか
・うみの遠くへ
のりだしてゐる半島に
わたしは
わびしい静脈をきく
・をんなに云ひよる 海の饒 舌──
しつとりと
ぬれてあをざめた
わたしの心臓
・ドロツプのあまさが
都會を攪乱する!
斷髪、斷髪──
カンニリングス!
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