睡れる幸福  乾直恵  (詩ランダム)

 

睡れる幸福

          乾直惠

黎明(あけがた)、あなたはきつと、機織音でぼくの夢を搖ぶる。
あなたの震はす指先に、露に濡れそぼつたスワン・リヴァ・デイジイが咲いてゐる。

筬(おさ)の中で、
幻の星條が消えたり燈つたりする。

ぼくは渺かに、織りかけの薄絹(うすもの)を見る。
淡彩のシヨールが極の方へ靡いてゐる。

あなたは何時の日か、黙つてぼくに指ざした。
──幸福はあすこに睡つてゐる。と……

 

 

『花卉』(椎の木社 1935)より

 

 

 

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