極光  乾直恵  (詩ランダム)

 

極光

                   乾直惠

あなたは三角洲の葦間から、
流暢な各國語でぼくに喋りかける。


ぼくはいちいちそれを懸命に、
速記する、翻譯する。
──アノ橋ノ袂二、アノ橋ノアチラガワノ袂ニハ……
──誰カガムカフ岸二、誰モムカフ岸二ハ……


長い鐵橋が半分夕陽の中へ折れ込んでゐる。
渡りかければ、ぼくも光のなかへ隕ち込むだ
 らう。幸福を抱(かゝ)へて、不幸を擁(いだ)いて──                     

 

 

『花卉』(椎の木社 1935)より

 

 

 

 

乾直恵 朝は白い掌を
乾直恵  Echo's Post-mark
乾直恵 神の白鳥
乾直恵 菊
乾直恵 睡れる幸福
乾直恵 鮠
乾直恵 光の氷花
乾直恵 村

 


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