温雅なる作謀に付いて  酒井正平  (詩ランダム)

 

溫雅なる作謀に付いて

            酒井正平

季 節

 畵廊について鶴があるいた しかし それは戀人たちよりも少なかつた 手をひらいて窓をあけた ケイトウの裏側に 算用數字がかいてある


類 似 譚

 太陽の 奔發 ! だけど 路には よつちや いない 片側に 倚せながら あたしは 倒さにも 横にも ピンの姿にも 別れる


兩 手

 帽子を ぬいで 王后の 前に やつて きた時 白い 鳥が おちて ゐた 只 それだけの ひみつだと思ひ ながら


花 の 顏

 花屋の様に開店する その意味があなたをそだてまいと 花屋はあなたを求めない 正しい時間に ! 舞台では花がおつこちる !


一 色

 風ん中に僕が生きて來た たとへられた物語りの様に風破に耐へて人を呼んだ しるべある喪失を型取りながら 球體のあちら側へ楓の様に路を折れた


 過失的な要路です 僕達に付いて燈火は又ほころびる 栽量的な役割を演ずるのは勞働性よりも基本性に富んでゐたからです ロオズイワアルドと手に畵いて 植物性の憂慮を此處に見て


 テンキの良い日 街に落ちた メイメイの日和がツリウキ草を飾つた 街に着物が見えた 人の手に花が咲いた アンズの陰でプロフェツトが死んだ 時計を持つて容易しい 顏をしてゐた 聖像商人の午后 唄を唄ひながら上つた……靑葉にぬれた貝を記憶だと思つて步いた

 

 

 


『MADAME BLANCHE』第13号 昭和9年(1934年)2月

 

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